さわやか法話 53  年頭のあいさつ

 新しい年が皆様にとりましてより良き年でありますよう、まずもって心からお祈り申し上げます。
 正月元旦と申しますと昨日と何ら変わったこともないのに何か、清新の気分に包まれてまいります。禅語では元旦を三朝と申します。即ち一年の初めの朝であり、一月の初めの朝であり、一日目の初めの朝であります。一年の計は元旦にあり、一ヶ月の計は一日にあり、一日の計は朝にありと申されるように何事も最初がたいせつであると思います。曹洞宗の開祖道元禅師さまも 「元旦は天地間のありとあらゆるものに幸運の開けるときである。人間ばかりではない、天地宇宙の事物がみなすべて清新な気力に満たされる。そして、ぐんぐん伸び栄えようとして誠にめでたい日である。このことをじっくり自分のものにせねばならぬぞ」 とお示しになっております。
 こうした祖師のお言葉をじっくりとかみしめる時、思いは今の世相に移ってまいります。現代はあわただしい気ぜわしい世の中です。合理化、機械化で人手をはぶく時代です。また、昨年は世界恐慌が日本も直撃して、多くの人々が不安を募らせております。そんな時代であればこそ、私たちは、せめても祖先から伝えられてきた心、ゆとりを保ちたいと思います。元旦の朝、除夜の打ち切りを待って、氏神様にお参りし、すがすがしい気持ちで拍手を打つ時、何か「今年はやるぞ」 「今年は健全である」という気分が湧いてくるでしょう。家中で笑顔のうちにお雑煮を祝い、衣服を改めて寺に年賀の挨拶をし、先祖の霊に合掌するとき、きっと自分と先祖とのつながりが身うちに感じられると思います。
 お正月に何を考え、何をなすべきかと、新しい年の第一歩をふみだすに当たっての心得を考えてみてはいかがでしょう。