わやか法話35 年頭挨拶 「古いもの 新しいもの」

 新年おめでとうございます。何度お迎えしても、元旦はすがすがしく、気持ちのよいものです。新年になったからといって、自然や生活の環境が、急に変わるわけではありませんが、人の心持が変わります。それは今年こそは、といった希望を抱いて、まず始めを慎むという緊張感が湧いてきますし、心機一転の心からは初日の出を拝み、初詣をするといったように、神仏に手を合わす敬虔な態度も現れてきます。
 私達は新しいものが本当に好きです。新しい衣服、新しい家、新しい畳、みんないいですね。新しい物はこれから自分の力でどうにも変えてゆくことができます。これから先への理想、希望、計画など、楽しい夢のようなものが、新しいものの前に沸き起こってくることです。
 昔から「1年の計は元旦にあり」と言い慣わされて来た事も、つまりこの新しいもののよさであり、あこがれではないでしょうか。しかし、新しいということは、古いものと比較して発せられる言葉であります。古いものを知らずして新しいものがわかるはずがありません。仏教は古代の遺物ではありません。何千年前に説かれたお釈迦様のことばは、聞くほどに新しさが湧いてまいります。いや、新しさばかりでなく、私たちの未来まで予言されているような教えであります。皆さんも、もう一度その教えの前に心を開いてみて下さい。時代は変転して、めまぐるしくなり、あわただしくなり他のことを考える余裕がなくなるだけでなく、自分の姿さえ見失ってしまいそうな状態でであります。その昏迷の中で必死に自分にしがみつき、自分本位の行動をしているのが今の大方の姿のように見受けられます。
 新春の明るい)陽光の中で、じっくりと自分の立場を考えてみましょう。古い古いと投げやったものをもう一度振り返って、古きを尋ねてみましょう。
                                   俊雄