さわやか法話32戻り燈籠

 夏、この時期になるといつも思い出すのは、昭和62年8月12日、乗客、乗員520名もが犠牲になった、日航ジャンボ機墜落事故のことです。私たちにもまだまだ忘れることのできない事故ですが、毎年、遺族の方々が墜落現場の御巣鷹山に登頂し、ロウソクを灯し、ご供養の誠を捧げております。 そのほの揺らぐロウソクの炎を見ておりますと、わたしの広島の友人から聞いた「戻り燈籠」の話を 思い出します。
 八月六日の原爆記念日の広島の夜を彩るものに慰霊燈籠流しがあるそうです。 日の暮れるのを待って、燈籠を手にした人々が大勢、原爆ドーム近くの川縁に集まって、燈籠供養を 受けた後、川に流して死者の冥福を祈るのです。おびただしい光が列をなして、海の方をめざして 静かに流れて行くのです。燈籠流しは、原爆の街、広島の夏を彩る華やかにも、悲しい風物詩で あるのです。 夜遅くなると、人影もまばらになり、川は又静かな暗闇となります。 ところがです。真夜中の12時も過ぎ、人影も絶えた川端に立って、川面を見ると、潮が逆流して 川を上って行くと言うんです。よく見ると、一度海に流れて行った燈籠が、灯りも消えているが 暗闇の中を戻って来るのです。それを見ていると、亡くなった死者の霊に接するような深い感銘を 覚えるそうです。思わず手を合わせ、合掌してしまうんだと語ってくれました。
お盆の時節です。ご先祖様とゆっくり対話したいものですね。
                                    栄雄