さ わやか法話3 ”春の 陽ざしのように”

 お彼岸にはご一家が揃って、小さなお子さ んまでも線香や花を手にしてお墓 参りをする 心相和した尊い姿だと、輝いて見えます。 『回向』という言葉があります。仏壇に、神社仏閣に手をあわせることも回向です。 この回向とは「めぐらしむける」ということ。他に対して自分のありったけの力を振り向ける、善根功徳をめぐらしむけると いうことです。 もう少しその深い意味あいを学んでみますと回向には種をまく、そして生まれでた芽を 成長させてやるという意味があります。 つまり、四十九日年忌といった法事をつとめますが、亡き人に自分の追善のまことを回向したら、 そこから自分はどんなことを受け止め、成長させてやらねばならないか、そこまで自分に問い掛けることが大切なのです。
 太陽の光を受けて、月が美しい光を照り返し、私達の心を優しくしてくれるように、仏さまや、 先祖さまからの語りかけ、照り返しの光を、自らの心に受けて人生の導きにする、生活の糧に していくというのが仏さまに回向して生きる我らの生活態度でありたいと思います。 まだ凍りついた大地を突き破るようにして、かれんな福寿草が芽を出していました。 私達の人生にも悲しみ、苦しみ、凍りつくほどの辛苦の時がありますが、回向する心とは、 ちょうど、やわらかな春の陽ざしのような、 凍てつく氷もとかしてくれるような温かい思いやりの心だと思えるのです。 皆様の心にも美しい何かの芽ぶきがありますように。        (栄雄)

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