さ わやか法話 21  とうかん夜

 旧暦10月10日、今年は10月14日ですが、この日を”とうかん夜”と い い、 また、”かかしあげ”、”かかしの年取り”とも言って、今まで田んぼで睨みをきかせて いてくれた”かかし殿”への感謝祭りであり、いわばかかし殿のご苦労よびをする わけです。 かかしの前に新米でついたお餅と大根2本を供えますが、餅はとうかん夜のものが 一番うまい、とうかん夜に大根を抜け、などとこの辺では言うようです。 この頃では、かかしが田んぼから消えてしまい、どちらの農家でもこんな祭りは しないのではと思っていたのですが、昨日、「とうかん夜についたから。」と おいしいぼた餅を届けてくれる家がありました。 かかしに宿る田の神様に、今年も無事収穫のできた喜びを捧げ、自然の大きな 恵みに感謝をする、大いなる力にただ頭を下げるのです。それをかかしの年取りと言う。 自分の苦労を、勤労を先に立てないで、まずかかしにあやかって、自分たちの苦労や 努力を静かに癒しているのです。自分たちの勤労や苦労を先にたてない、 わが先輩たちの敬虔な心根がすばらしいと思います。
 苦労をしみじみとした喜びに昇華する、そんな智慧が昔からの風習に残されて いるわけです。 それにしても新米のうまさは格別です。平和の「和」という字はなごやか、 しみじみとした喜びを表す字ですが、お米が私達の口に来た時、人の心は 「和」になるというのです。その美味しさは平和を噛み締めているからなんでしょう。 とうかん夜が済むと田の神はお餅を土産に山に帰って行き、一休みです。 自分の力を先に立てないで神仏のお陰を知る心、神仏に頭をひれ伏すことの できる心、それがあるから私達の心は「平和」になれるのです。
                             (栄 雄)