さわやか法話 16  不幸とは・・・

 皆様にはお健やかに新春をお迎えのことと お慶 び申し上げます。 本年もよろしくお願い申し上げます。
 さて、こんな話があります。 昔、あるところに一人の独身男性がおりました。 あまり幸せにめぐまれず、一生にせめて一度でいいから幸せになりたいものといつも神に願っていたという。 その甲斐があってか、ある夜、男の家の戸をたたく者がいた。 誰かと思って開けてみると、外に立っていたのは”吉祥”という幸福の女神であった。 男は大喜びして家の中に招きいれようとした。すると女神は「一寸待ってください。 私には実の妹がいて、いつも一緒に旅をしております。」と言って後ろにいる妹を紹介した。 男はその妹を見て驚いた。その妹は姉とは似ても似つかぬ醜い女神であった。 男は「本当の妹ですか」といぶかると、「はい、実の妹です。名を不幸の女神黒耳と申します」という。 そこで男は「あなただけこの家に入ってください。 妹のほうはお帰りいただきたい」と言った。 すると、「それは無理なことです。 私たちはいつもこうして一緒に連れ添わなければなりません。 一人だけというわけにはいかないのです」と言う。男は困ってしまった。 幸福の女神は「お困りなら二人とも引き上げましょう」と言う。 男はまったく途方に暮れてしまった。
 以上のエピソードは「阿毘達磨倶舎論」にのっている、 幸福の女神と不幸の女神が異身同体であることを説いた一説である。 ”過福はあざなえる縄の如し”とも言います。自分の不幸を嘆くばかりでなく、 私たちの人生は幸福の女神と不幸の女神との道連れだとしっかりと思い、 二人の女神と一緒に連れ添ってうまく行きましょう。一人だけ置き去りにはいかないのです。 考え深いエピソードではありませんか。