碩水寺の本堂に入りますと欅の大縁がありますが、 その縁の片隅に赤茶色で赤い頭巾をかぶり、桃色の胸当てをされた仏像が目にとまると思います。 おびんずるさまと申します。 この仏様はお釈迦様のお弟子になって、ある静かな所で座禅の修行をされておりました。 すると近くに騒々しい人声がしまして、 あるお金持ちの子が竿の先に金でつくった馬の首をのせ、「これを神通力でとった者に与える」と言っておりました。誰も神通力でとることができないので騒いでいたのです。れを知ったびんずる尊者は、神通力をもっておりましたから、座禅をしている台のまま空高く昇り、その金馬のまわりを廻り始めました。下で見ている人達は、いまにもその台と人が落ちてくるのではないかとまたまた大騒ぎとなり、 中には怪我をする人さえ出たそうです。

 後でこのことをお釈迦さまがお聞きになりまして、びんずる尊者の行いをお叱りになりました。 尊者は大変後悔しまして、自分の不心得を恥じ、一層修行に力をいれ「自分の力にうぬぼれていた私は、なんてつまらぬことをしたのだろう。これからはできるだけ多くの人に接して、その苦しみを救わなければならない」と申され、お釈迦様のお側に近づくのは恐れ多い、だから本堂の入口にいて、人々の手の届くようにしようと長縁に居られるのです。以来、寺のびんずる尊者をお参りし、頭の痛む人は頭をなで、お腹の痛む人はそのお腹をなでると痛みが止まるとされています。そして、その願いがかなえられると頭巾やむね当てを作って奉納するようになったと言われています。